さまざまな分野においてプロフェッショナルとして活躍する方たちに Hello, Coaching! 編集部がインタビューしました。
ボストン・レッドソックス スカウト 嘉数駿 氏
第8章 日本のスカウト、アメリカのスカウト
2017年07月06日
※内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。
ハーバード大学を卒業後、野球の世界に飛び込み、現在はボストン・レッドソックスのスカウトとして活躍する嘉数駿(かかず しゅん)氏。野球チームのスカウトとは、いったいどんな仕事なのか? 嘉数さんが野球の世界に飛び込んだ経緯から、今後のビジョンまで、お話をうかがいました。
第1章 | 『マネー・ボール』との出会いが人生を変えた |
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第2章 | 1年半にわたる就職活動 |
第3章 | 野球の世界で働き始める |
第4章 | スカウトの仕事 |
第5章 | 誰でもスカウトになれる? |
第6章 | 優れたスカウトに求められる3つの能力 |
第7章 | スカウトは何で評価されるのか? |
第8章 | 日本のスカウト、アメリカのスカウト |
第9章 | もっと多くの人に野球を楽しんでもらいたい |
※内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。
第8章 日本のスカウト、アメリカのスカウト
日本のプロ野球は12球団。アメリカのメジャーリーグは30球団。規模が大きく異なります。スカウトの仕事にも、それぞれの国で違いがあるのでしょうか。
日本の野球チームとメジャーリーグのスカウトで、違う点があればおしえてください。
嘉数 日本のスカウトとアメリカのスカウトの違いは、一概には言えません。日本でもアメリカでも、球団ごとに違うところもありますし、「プロスカウト」と「アマチュアスカウト」と「海外スカウト」で全然違ったりするので。ただ、ある程度の傾向として、アメリカのスカウティングの方がシステマチックだとは思います。日本の方が、よくも悪くも自由な感じ。アメリカは、項目や評価基準がしっかりしています。「パワー」、「スピード」、「肩の状態」といったいろいろな項目において、これくらいであれば、こういう評価をする、ということが決まっているんです。ある程度訓練されていれば、誰でも最低限の仕事ができるようなフォーマットになっています。日本の場合は、なんていうのでしょうか、、、。
勘?
嘉数 そうですね。勘を活かしていることのほうが多いと思います。たとえば、「球の伸びがいい」とか、「球のキレがいい」とか、「マウンドさばきがいい」といった表現がありますが、「それってなんなの?」と聞かれると、なんとなくしか説明できないみたいなのがありますよね。もちろん日本だけではなくて、英語でも同じような表現はあるし、同じような評価もあるんですが、スカウティングにおいて、なんとなくしか定義できない表現をしても許されるのは、日本のほうが多いと思います。だから日本のほうが、当たり外れも大きいように思います。センスのある人、観察眼のある人が、そういう裁量を許されると、やっぱりいい選手をとってくるわけです。そういう意味では、日本のほうが、名スカウトという人は多いと思います。
なるほど、でも形式知になっていない分、日本でスカウトを育成するのは難しそうですね。「職人の技」っぽい印象です。
嘉数 そうそう、そうなんですよね。だから僕も、アメリカ的なスカウティングでないと、たぶんスカウトになれなかったと思います。アメリカの場合、スカウトスクールもあるんです。約2週間、全員で試合を観て、選手の点数をつけたりして勉強します。誰でも訓練が受けられるようになっているんです。
スカウトスクールというのは、球団ごとにあるのですか?
嘉数 球団に所属しているわけではなくて、独立した機関です。経験もチームも違うスカウトが集まってトレーニングを受けます。
他のスポーツもスカウトという仕事はあると思いますが、スカウトスクールがあるのは野球だけなんでしょうか。
嘉数 他の競技についてはわかりません。ただ、アメリカでは、野球の競技人口が多いし、お金も動くから、システマチックになっていったところもあるんじゃないでしょうか。経済的な規模が大きいと、失敗の影響が大きくなりますからね。
(次章に続く)
聞き手・撮影: Hello Coaching!編集部
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