コーチングの基本

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【解説】コミュニケーション能力を向上させる8つのスキルと、うまくいかない時に試したい2つのコツ

【解説】コミュニケーション能力を向上させる8つのスキルと、うまくいかない時に試したい2つのコツ

コミュニケーションとは?

コミュニケーションとは、共に目的地に向かうことであり、共有することであり、そのプロセスは 「キャッチボール」です(前回記事を参照)。

そこで、今回は、「コミュニケーションはキャッチボール™」を実現するための具体的なスキルとコツを紹介します。

1.準備する〜「安心感」の土壌をつくる〜

キャッチボールをしようと思っても、

  • 「いきなり鉄球が飛んでくるかもしれない」
  • 「もしかしたらドッジボールになるかもしれない」

そんな不安があっては、キャッチボールを始めることすらできません。

コミュニケーションのキャッチボールをするために最も大切なのは「安心感」です。安心感があってこそ、人は、「キャッチボールを始めてみよう」「キャッチボールを続けたい」と思います。

安心感をつくり出すには、日頃の積み重ねが大切です。ここで紹介するポイントを、日々の会話などで実践してみましょう。

スキル1.ペーシング」で安心感を生み出す

人は相手との「違い」に対して警戒心を抱きます。それは相手との「相違点」に、孤立への恐怖や対立の危険性を感じとり、防衛意識が働くからです。逆に言えば、「一緒」であることに、人は安心感を覚えるのです。

これは、コミュニケーションにおいても同じです。そこで機能するのが、「ペーシング」です。

ペーシングとは、相手に合わせてコミュニケーションをとるスキルです。話すスピードや声のトーン、使う言葉などを合わせることで、防衛意識を取り払い、緊張を和らげます。

具体的には、次のようなことです。

  1. 相手と同じ速さ、同じトーンで話す
  2. 共通の話題について話す(趣味や好きなスポーツなど。これはアイスブレイクにもオススメです)
  3. 相手の使った言葉を繰り返す
  4. 同じものを飲む、食べる、注文する
  5. 視線を軽く合わせる

自分と同じようなスピードやトーンで話す人に、人はより安心感を抱きやすいものです。安心感があれば、より会話に集中することができるでしょう。

関連情報:
[Coach's View] 言葉の繰り返し

スキル2. 「ノンバーバル」で話しやすい雰囲気をつくり出す

コミュニケーションには、大きく分けて、バーバル・コミュニケーション(言葉によって伝わるもの)ノンバーバル・コミュニケーション(言葉以外によって伝わるもの)があります。ノンバーバル・コミュニケーションとは、話し方(口調、抑揚、語調の強弱など)やボディランゲージ(表情、身振り手振り、姿勢など)のことを指します。

たとえば、「いいね!」「すばらしい!」「なるほど!」と言うときに、声のトーンが低かったり、眉間にシワが寄っていたり、あるいはパソコンや資料に目を向けたままだったりしては、言葉通りの意味は伝わりません。最悪の場合、「君のことは大事に思っていない」「君に本当のことは言わない」といった真逆のメッセージが伝わることになります。

このように、ノンバーバルなコミュニケーションは、時に言葉以上のメッセージを伝えることがあるにもかかわらず、多くの人は、自分のノンバーバルを意識していないものです。ノンバーバルは、使う言葉以上に意識的に、注意して選ぶ必要があります。次のポイントを参考に、自分でチェックしたり、周りからのフィードバックをもらったりしてみましょう。

  • 表情(鏡でチェック! 特に、目と口角に注目しましょう。)
  • 姿勢・態度(相手に体を向けていますか? 「ながら」聞きは厳禁です。)
  • 口調・抑揚・スピード(相手にとって心地よいものでしょうか? ペーシングしていますか?)

スキル3. 「アクノレッジメント」で味方であることを伝える

アクノレッジメントとは、「相手の存在を認め、さらに相手に現れている変化や違い、成果や成長にいち早く気づき、それを言語化して相手に伝えること」です。

アクノレッジメントには、大きく分けて、次の4つがあります。

  • 存在承認
  • 行動承認
  • 成果承認
  • 成長承認

アクノレッジメントの語源には、「そこにいることに気づいていることを示す」という「存在承認」の意味があります。人類は、互いに協力関係を築きながら生き延びてきました。そのため、人は本能的に、絶えず自分が協力の輪に入っているかどうかをチェックしています。それに対して「イエス!」と伝えるのが、このアクノレッジメントです。

この「自分の存在は認められている」という感覚は、職場やコミュニケーションにおける安心感や信頼関係につながります。

次に挙げるのは、存在承認の具体的な例です。あなたは普段どのくらい存在承認を実践しているでしょうか?

  • 挨拶する
  • 名前を呼ぶ
  • 目を合わせる
  • 相手のほうに体を向けて会話する
  • こちらから話しかける
  • 相手が話したいことを聞く(自分が聞きたいことだけでなく)
  • 労う
  • 感謝する
  • 約束の時間を守る
  • ちょっとした変化に気づき、それを伝える(髪を切ったね、新しいスーツだねなど)
  • メールや質問にすぐ答える
  • 相手が前に言ったことを覚えている
  • 意見を求める、相談する
  • 仕事を任せる
  • 役割を与える
  • 相手の得意なことについて教えを請う
関連情報:
[リーダーシップミニ講座]アクノレッジメントで活気と成長を生み出す(全5回)

2.ボールを効果的に受ける(聞くためのスキル)

コミュニケーションのキャッチボールをする土壌ができたところで、今度はキャッチボールのやり方について目を向けます。

会話において、あなたは「話す」ことと「聞く」こと、どちらを重要視していますか。コミュニケーションというと、つい「話す(ボールを投げる)」ことを意識しがちですが、まずは「聞く(ボールを受ける)」ことに集中してみましょう。ボールの受け方、つまり「聞き方」を磨くことで、会話のキャッチボールを継続し、発展させていくことができるようになります。

ここでは、「聞く(ボールを受ける)」ためのスキルを3つ紹介します(スキル4~6)。

スキル4. 「聞く」ことでボールをしっかり受け止める

「人の話に耳を傾けることは重要だ」という意見に異議を唱える人はいないでしょう。しかし、実は、人の話をそのまま聞くことができる人は多くありません。たいていは、話を聞きながら、自分が次に何を言うか、何を質問するのかを考えていたり、話の内容を判断・批判していたりするからです。

コミュニケーションにおいて、「聞く」という行為は、決して受け身ではなく、アクティブで、クリエイティブな関わりです。優秀な聞き手は、さまざまなことを聞き分け、聞くことを通して相手のリソースやアイディア、ビジョンを引き出すことができます。

こうしたアクティブ・リスニング、クリエイティブ・リスニングの土台にあるのが、そのまま「聞く」ということです。相手が伝えようとしていることを、判断や解釈を交えずに、そのまま、まず受け取る。簡単なようで、これがなかなか難しいのです。

次に挙げるのは「そのまま聞く」ためのポイントです。さて、あなたは今、どのくらいできていますか?

  • 相手の話をさえぎらずに最後まで聞く
  • 自分が次に話すことを考えない
  • 相手を尊重する(自分の考えは脇に置く。「でも」「私だったら」が頭に浮かんだら注意!)
  • 判断しない(いい/悪い、自分と同じ/違うなど)
  • 自分が相手の話を理解しているかどうかをときどき確認する
  • わからないとき、理解できないときは正直にそう伝え、もう一度話してもらう
関連情報:
[Coach's View] 脳を飽きさせない

スキル5. 相手と場に合わせて、「質問」を効果的に使い分ける

相手から話を引き出すには、オープン・クエスチョンがいいと言われます。しかし、オープン・クエスチョンも、「いつも、どこでも、誰にでも」有効なコミュニケーションではありません。

たとえば、知り合って間もない相手には、YES/NOで答えやすいクローズド・クエスチョンから始める方がキャッチボールがうまくいくこともありますし、状況や相手のタイプ、会話の段階によって、クローズド・クエスチョンを活用した方がキャッチボールが円滑に進む場合もあります。

会話のキャッチボールにおいて大切なのは、「効果的な質問をする」「いい質問をする」ことではなく、「相手が話しやすい質問」をすることです。必要なのは、相手をよく観察し、どんな種類の質問が相手とのキャッチボールをうまくいかせるのか、それを考えながら質問をすること。

そのためには、まず、質問の種類や効果について知っておく必要があります。ぜひこれを機会に質問についての知識を増やしましょう。

スキル6. 「沈黙」で「間」を提供する

コミュニケーションのキャッチボールには「間」が必要です。「次はどんなボールを投げようか」と考える「間」、つまり「沈黙」も、コミュニケーションにおける大切な要素です。

「間」をもつと、次のようなことができるようになります。

  • 情報を整理、咀嚼する
  • 自分の考えていることを整理する
  • 言いたいことを表現できる言葉を捜す
  • 自分が本当に言いたいこと、感じていることを探る
  • 何かに気づく

とはいえ、沈黙は、話し手、聞き手の双方にとって、居心地のいいものとは限りません。沈黙を埋めようと、とにかく話したり、矢継ぎ早に質問を投げかけたりするものの、その結果、会話がちぐはぐになっていった、というような経験はないでしょうか。

そんなときに有効なのが、次の一言です。

「ゆっくり考えてください。待っていますから。」

この一言で、沈黙の居心地の悪さはなくなり、沈黙が、本来の創造的な働きをするようになります。

関連情報:
[リーダーシップミニ講座]リーダーとして聞く力を磨く 第5回 沈黙を活用する

3.ボールを効果的に投げる(伝えるためのスキル)

次に、コミュニケーションのキャッチボールにおける「伝える(ボールを投げる)」スキルを見ていきます。こちらの投げ方次第で、相手から返ってくるボールや、投げ返し方が違ってきます。こちらが投げ方を間違えば、ボールが二度と返ってこなくなることもあります

スキル7. 「フィードバック」で相手に返す

誰かと話していて「相手はどう感じているんだろう?」「ちゃんと聞いてくれているのかな?」と不安になったり、「もしかして怒らせてしまったかな」「何か気に障ったのでは」と心配になったりしたことはないでしょうか。

相手がどう思っているかを知るのは少し怖いものですが、それがわからなくても不安なものです。そんな状態では、安心してキャッチボールを続けることはできません。

そこで、機能するのが「フィードバック」です。

話しているときに不安を感じたら、フィードバックを求めてみましょう。

「今の話を、どんな風に理解しましたか?」
「少し困ったような顔をしていますが、何か気になるところはありますか?」

という風に確認し、すり合わせることで、ズレや乖離なく話を進めていくことができます

逆に、話を聞いているときに、確認のフィードバックすることも有効です。

「あなたの今の発言を、こんな風に私は理解しましたが合っていますか?」
「今のところがちょっとわかりづらかったので、もう一度説明してください」

という風に、相手の話があなたにどう伝わっているのかを相手に返します。そうすることで、相手は安心して話を進めたり、確認し直したりできます

もう一つ、とてもシンプルで、そして重要な「フィードバック」があります。それは、「相槌」や「頷き」です。相槌や頷きによって、「ちゃんと聞いているよ」「ちゃんと伝わっているよ」「ちゃんと受け取るよ」というメッセージが伝わり、相手は安心してキャッチボールを続けることができるのです。

関連情報:
[Coach's View] 七色のあいづち

スキル8. 「リクエスト」や「提案」でキャッチボールを活性化させる

提案」や「リクエスト」は、会話を活性化させるために役立ちます。

仕事の取組みについて話し合っているときに、「たとえば、こんな取組みはどうですか?」と提案をすれば、その内容が採用される場合もあれば、それがヒントや刺激となって相手の中に新たなアイディアが生まれることもあります。いずれにしてもキャッチボールの活性化につながります。

また、相手から話が出てこないときには「〜について聞かせてください」とリクエストすることもできます。

重要なのは、「提案」や「リクエスト」をするときにも、「キャッチボール」することを忘れないこと。

いきなり提案したり、リクエストするのではなく、はじめに

「提案したいのだけれど、いいですか?」
「リクエストしてもいいですか?」

と相手に聞き、相手の同意をとります。

そして、「提案」や「リクエスト」を伝えた終わった後に、もう一度聞きます。

「今の提案(リクエスト)はどうかな?」

このとき、「ノー」というボールが返ってくることも十分想定しておきましょう。「ノー」のボールには少し驚くかもしれませんが、あらかじめ想定していれば大丈夫。「そうか、『ノー』なんだね」と受け止めてから、新しいボールでキャッチボールを始める余裕があれば、何も問題はありません。

「提案」や「リクエスト」はキャッチボールの活性化に有効ですが、難しいと感じたときは、キャッチボールを無理に続ける必要はありません。コミュニケーションを一旦終わらせることも大切です。

4.キャッチボールが行き詰まったり、マンネリ化した時に試したい2つのコツ

次に、会話のキャッチボールに行き詰まりを感じたときに使える方法を紹介します。

コツ1.「メタ・コミュニケーション」で共に俯瞰し、仕切り直す

「会話の雲行きがあやしい」「なんだか居心地が悪い」

コミュニケーションのキャッチボールにおいて、そんな違和感が生じたら、メタ・コミュニケーションを試してみましょう。

メタとは英語の接頭辞で、「上から」「距離をおいて」といった意味です。つまり、メタ・コミュニケーションとは、直訳すると「上から距離をおいてみたコミュニケーション」ということになります。

誰かとの間で交わされているコミュニケーションを、心の目を浮遊させて、上から距離をおいてみてみる、そしてその様子を話題にしてコミュニケーションを交わすのが「メタ・コミュニケーション」というスキルです。

具体的には、自分が誰かと交わしているコミュニケーションを俯瞰して観察します。そして、感じたこと、気づいたことを相手に伝え、そのことに対して相手がどう思っているかを聞きます。たとえば、「お互いにすごく遠慮して話しているように感じるのだけれど、どう思う?」というように。

そうすることで、交わされているコミュニケーションを仕切りなおすことができます。

違和感を抱えたままキャッチボールを続けるのは、双方にとって、大変なエネルギーロスであり、負担であり、ストレスです。ほんのちょっとでも違和感を感じたら、少し距離を置いて、自分たちのコミュニケーションを外側から眺めてみる。そして、新しくキャッチボールをスタートしましょう。

関連情報:
[Coach's View] 「集中」と「解放」のレッスン

コツ2.「タイプ分け™」でキャッチボールもテーラーメイド

ここまで8つのスキルと1つのコツをお伝えしてきましたが、コミュニケーションにおいて、「いつでも、誰でも」に効く魔法のような方法はありません。つまり、キャッチボールも「テーラーメイド」にしていく必要があります。そして、そのヒントになるのが、コミュニケーションの「タイプ分け™」です。

たとえば、「ペーシング」。話すスピードも、タイプによる傾向が見られます。また、会話のキャッチボールの潤滑油である「相槌」も、相手のタイプによって異なります。

「相手はどんな人で、どんなキャッチボールを好むんだろう?」

そうした純粋な興味こそが、コミュニケーションのキャッチボールをうまくいかせる最大の秘訣です。

5.最後に

実際のキャッチボールが練習によって上達するように、コミュニケーションのキャッチボールも、継続的な練習と経験によって磨かれます

しかし、一度にたくさんのポイントに取り組もうとすると、それが緊張やストレスとなり、結果としてコミュニケーションも硬直したものになりかねません。まずは、試してみようと思うものを一つ選んで取り組むことから始めてみてください。

オススメは一週間にひとつずつ、取り組んでいくことです。

参考図書:
「コーチングマネジメント」伊藤守著 ディスカヴァー刊
「図解 コーチングスキル」鈴木義幸著 ディスカヴァー刊
「一流のリーダーほど喋らない」桜井一紀著 すばる舎刊
「『よい質問』をする技術」粟津恭一郎著 ダイヤモンド社刊

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