コーチングの基本

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【解説】ビジョンとは? 「ビジョン」にまつわる7つの誤解

【解説】ビジョンとは? 「ビジョン」にまつわる7つの誤解

「ビジョン」とは

「ビジョン」を辞書で引くと、「将来のあるべき姿を描いたもの。将来の見通し。構想。未来図。未来像。」とあります(大辞林(第3版)。

「組織のビジョン」とは、「自分自身やチームメンバー、会社の将来の理想像や未来の光景」「成し遂げたいと思っているゴールや目標を手にした瞬間の映像」といった、将来なりたい姿の状態や光景のことであり、自分自身が実現したいことや実現した時のイメージをクリアに描いた「未来の青写真」である、と言うこともできるでしょう。

ビジョンには、人や組織を前進、成長させる力があります。

リーダーが「ビジョン」に寄せる期待と抱える課題

魅力的なビジョンが組織に与える影響には次のようなものがあります。

  • 本当に目指したい未来の姿に向かって、ブレずに向かうことができる
  • ゴールがクリアになり、行動しやすくなる
  • 不確実な未来にリアルなイメージをもつことで不安が減り、「やれる」「やる」という感覚が高まる
  • 結果として、現実に対応する能力や行動が引き出される
  • 今やっていることや自分の身に起こっていること意義や意味を感じることができる
  • ビジョンを浮かべることで、嬉しさ、楽しさ、気概などを感じ、エネルギーが湧く
  • 「選択的知覚」が働き、ビジョンの実現可能性を高める情報にめぐり合う確率が高まる

ただ、「ビジョン」のこうした力を十分に活用するのは、なかなか難しいのも事実。

ゆえに多くのリーダーが「ビジョン」に高い関心と期待を寄せると同時に、次のような課題を感じていることが少なくありません。

「実はビジョンを描くのが苦手、あるいは、描くことができない」
「組織やチームにおいて、ビジョンの共有に苦戦している」
「部下のビジョンをうまく引き出すことができない、あるいは、引き出すのが怖い」

こうした課題の背景には、ビジョンに対するいくつかの「誤解」があるようです。

そこで、ビジョンを「描く」「共有する」「引き出す」という3つの場面別に、ビジョン本来の力を有効活用するためにリーダーが解いておくべき誤解に迫ります。

「ビジョンを描く」にまつわる3つの誤解

ビジョンは頭の中で考えるだけでは出てこない

ビジョンがうまく描けないことを気にする必要はありません。なぜなら、多くの人にとってビジョンを描くというのは、そう簡単な作業ではないからです。

人間には、頭の中だけで思考を巡らすよりも、アウトプットしながら考えたほうが自分自身の考えが明確になりやすい、という特徴があります。ゆえにビジョンも、一人で頭の中で考えるより、誰かと話したり、文字に書いたり、それこそ絵にしてみるなど、アウトプットしながら考えるほうが描きやすくなります。

特に、あなたが語るビジョンについて聞いてくれる人がいたら最高です。話を聞きながら、

「ほかの選択肢は?」
「ほかの人の考えは聞いてみた?」
「3年後の自分から今の自分を見ると、どんなふうに見えるだろう?」

問いかけを通じ、さまざまな可能性を思い描く過程でビジョンは鮮明になっていきます。そして、こうしたプロセスを継続的に行うことで、ビジョンが実現する確率も格段にアップするのです。

「一度描いたらOK!」ではない 鍵はビジョンの「鮮度」

ビジョンをしっかり描いたはずなのに、なんだかあまり機能しない...それは、ビジョンの鮮度が落ちている証拠です。

ビジョンは一度描いたら終わりというものではありません。なぜなら、あなた自身も刻々と成長・変化し、同様に環境や状況も日々変化し続けているからです。つまり、昨日のビジョンではもう古い。何度も何度も描く必要があるのです。

「今、ここ」で、ビジョンを育て、描きなおし、更新していく必要があります。

見落とされているのは「ビジョンは記憶できない」ということ

たとえ環境が変わっても同じビジョンをもち続けている、何があっても変わらないビジョンを描いている、という方もいるかもしれません。

そのような場合、「描きなおす必要はないのでは?」と思うかもしれませんが、答えはNOです。

まったく同じビジョンであったとしても、ビジョンは毎回新しく描きなおす必要があります。なぜなら、ビジョンはさまざまな要素が含まれ、情報量が多いため、そのまま記憶しておくことができないからです。そのため、意識的に、定期的にビジョンを描く機会をつくることが重要です。

「ビジョンの共有」にまつわる1つの誤解

ビジョンは「伝えた」からといって「共有」できるものではない

もしあなたがプレゼンテーションやトーク力に定評があるリーダーなら、ビジョンの共有には、逆に注意が必要かもしれません。なぜなら、どんなに熱心に語っても、どんなに華麗なプレゼンテーションをしても、それだけでは伝わらない、それがビジョンだからです。

ビジョンを浸透させるために必要なのは何か?

それは「ビジョンについて相手に話をさせること」であり、「双方向でビジョンを扱い続けること」です。

以下に、興味深い事例とともに、その理由を紹介します。

●人は話すことで、咀嚼し、理解し、自分の言葉になることで本当の意味で自分のものにする

●方針と自分との関係について話す機会があってはじめて、方針に基づいた行動が生まれる

●人は「問われる」ことで、メッセージを欲するようになる

●脳を「受け身」にしないためには、脳を「発信側」にするしかない

Coach's VIEW Let everyone TALK !

●互いに伝え合うことで「私たちの体験」に昇華されるから

「ビジョンを引き出す」にまつわる3つの誤解

部下のビジョンを聞くのは危険?

さて、あなたは、部下自身のビジョンに関心をもっていますか? 部下のビジョンを本人から直接聞いたことがあるでしょうか。

部下のビジョンなんて聞いてしまったら収拾がつかなくなる、他のことがしたいなんて言い出したらどうなるんだ...そんな不安もあるかもしれません。しかし、いくら見ないふりをしたところで、相手の想いやビジョンが消えることはありません。そしてそれは、部下の考え方や行動に、少なからず影響を与えているものです。

そう考えると、想定外の話が飛び出る危険を恐れるあまり、部下のビジョンを聞かないのは得策とはいえません。

リーダーが注力すべきなのは、部下のビジョンと組織(チーム)のビジョンの一致点を見つけること。そのためには、まず相手がどんな想いをもち、何を考えているのかを聞くところから始めるしかありません。案外、部下の描いているビジョンは、リーダーのあなたにとっても心強く、頼もしいものかもしれません。

「ビジョン」は常に行動や前進のエネルギー源というわけではない

ビジョンというと「何かポジティブでいいもの」「未来へと前進させる存在」、そしてちょっと遠いもの、壮大なものをイメージするかもしれませんが、そうとばかりはいえません。

人は知らず知らずのうちにちょっと先の未来を描きながら生きています。それはいつもポジティブなものとは限りません。「ネガティブなビジョン」である可能性もあるのです。たとえば、「きっと今日の営業は失敗する」「このプロジェクトを始めると面倒だな」「きっと上層部は反対するに違いない」、そんなビジョンが浮かんでいては、行動を起こさないばかりか、エネルギーもダウンしてしまいます。

まずは、今、相手がどんなビジョンを描いているかを知ることが重要です。それがネガティブなものであっても、夢と情熱に満ちたビジョンと同様、そのことについて話し続ける必要があります。なぜなら、話すことで他の選択肢や可能性が見え、より良い未来やエネルギーにつながるビジョンになっていくからです。

ビジョンを引き出すスキルよりも重要なことがある!?

部下のビジョンを引き出そうと問いかけたり、ビジョンについて語り合う時間をつくったものの、どうもうまくいかない。なんとかしたいとビジョンについての書籍を読んだり、質問力を磨く努力をしたりするものの、やはり部下は話してくれない。

そんなときは、相手とあなたの間の「信頼関係」に焦点を当ててみましょう。

ビジョンについてなど、すぐにすらすらと話せるものでもありません。

ビジョンとは、安心して話せる相手と、油絵を描く様に会話を重ねることで、あるときはっきりと現れてくるものです。ですから、まずは相手が「自分のことを話したい」と思うような信頼関係を築くこと、そして、相手と相手のビジョンに関心をもち続け、問いかけ、耳を傾け続けることが大切です。この両輪が揃ってこそ、信頼関係とビジョン、その両方がより強いものとなっていくのです。

いかがだったでしょうか。

ビジョンに関する新しい発見はありましたか。視点を少し変えることで、ビジョンはもう少しつきあいやすいものになるのかもしれません。

あなたがリーダーとして、ビジョンの力を体感し、ビジョンの力を活かすことに、今回の記事が少しでもお役に立てば幸いです。

参考資料:
CoachAcademiaマニュアル モジュール09 「目標設定とビジョン・メイキング」

参考書籍:
「コーチング マネジメント」伊藤守著
「3分間コーチ」伊藤守著
「コーチングが人を活かす」鈴木義幸著

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