書籍紹介


特集『「良い質問」をする技術』
株式会社コーチ・エィ 取締役 粟津恭一郎

【著者インタビュー 前編】 この本を書いたのは、『質問』の地位を向上させたかったから

【著者インタビュー 前編】 この本を書いたのは、『質問』の地位を向上させたかったから

コーチ・エィのエグゼクティブコーチとして、200人余りのエグゼクティブをコーチしてきた粟津恭一郎の初の著書、『良い質問をする技術』が、9月29日にダイヤモンド社より発売になりました。「質問について、日本で一番考えているという自負がある」と公言する粟津ですが、実際にクライアントの経営者にお話を聞くと、「粟津さんは質問しかしない」とみなさん一様に、そして嬉しそうにおっしゃいます。そんな粟津へのインタビューシリーズ第一弾です(全3回)。

前編 この本を書いたのは、『質問』の地位を向上させたかったから
中編 センスよりトレーニングが重要
後編 【著者インタビュー 後編】質問の可能性を考えるとワクワクする

質問には人生を豊かにする力がある

なぜこの本を書こうと思ったのですか。

「質問の地位を向上させるため、でしょうか。世の中ではたいてい、質問はコミュニケーションのひとつにすぎず、『ああ、会話の中で質問することもあるよね』程度にしか認識されていません。日頃の生活で、質問に意識を集中させることも稀でしょう。でも、何気なく口にしている質問を意識し、少し変化させるだけで、人生が豊かになったり相手の人生が劇的に変化する可能性があるんです。くわえて、組織にも変化を与えられる。それを知って欲しいと思い、徹底的に質問についてこだわった本を書き始めました」

質問にこだわるようになったきっかけを教えてください。

「私は大学院で経営戦略を学び、コーチ・エィに転職する前はメーカーの経営戦略グループで働いていました。経営戦略の前提は、『立てた戦略通りに人が動く』。ところが実際には、なかなか予定した通りに動いてくれない上司がいたり、話が噛み合ない部下がいたりして、思ったように進まないという経験は誰もがもっていると思います(笑)。戦略を左右する変数はさまざま存在し、しかも誰もがそこに気がついているのに計画の中には入っていない。議論を重ねて再び戦略を練り直しても、また新たな変数によって失敗する。そんなプロセスを繰り返しているうちに、人を動かす術がなければどんな優れた戦略も機能しないと気がつき、コーチングに目を向けるようになったのです。

 転職後、大手企業のエグゼクティブを中心にこれまで約200人の方にコーチングを行なってきました。そのなかで、質問の力に私自身が引きこまれていったのです。......というとかっこいいのですが(笑)、実際には経営者の方々に対して何も武器がなかったというのが正直なところです。経営の経験では圧倒的に相手が上ですし、素直に耳を傾けてくださる方ばかりではありません。手探りでコーチングを進めているうちに、いい質問を投げかけると喜んでいただけることが多いとわかってきました。その影響は相手個人にとどまらず、喜んだエグゼクティブが組織にいい影響を及ぼせば、組織もより良い状態へと進化する手ごたえを感じたのです。組織は生き物なんですね」

行動に影響を与えてこそ『良い質問』といえる

『良い質問』とは具体的になんでしょうか。

「私の考える定義は、質問された人が答えたくなり、新しい気づきを与えてくれるもの。たとえばあるIT系のベンチャー企業の社長のYさんは、『イノベーションを起こすようなアイデアが次々と出てくる会社にしたいのに、実現に至らない』とコーチングを依頼されました。社内会議に同席してみると、アイデアを出す若い社員に対してYさんは『本当にできるのか?』『それは他社ではやっているか?』など、ネガティブな質問を多くしているのです。Yさんによれば新規事業を成功させるためだとおっしゃるのですが、あまりそうは見えませんでした。ふたりきりになったとき、Yさんに『もし創業時のグーグルの社長がこの会議に出ていて、社員のアイデアを聞いたとしたら、どんな質問をするでしょうか』と尋ねると、ハッとして『他社ではやっているか?とは聞かないだろうな」とつぶやきました。ご自分の質問がアイデアの芽を摘んでいることに、質問を受けたことで気がつかれたわけです。その後Yさんがする質問は大きく変わり、『君はどうしてそのアイデアを実現させたいの?』『そのアイデアで世界をどう変えたいの?』などと、前向きなものが多くなりました。今では誰もが知るインターネットのサービスを実現し、新しいアイデアも続々と生まれているようです。

 Yさんの例が示すように、いい質問は気づきを促すだけでなく、行動をも変える力があります。それこそが質問の持つ価値であり、おもしろさだと思います」

『良い質問』かどうかは、その場でわかるのでしょうか。

「以前はわかる気がしていましたが、今は考えが変わりました。先ほどの例でいえば、Yさんが私の質問を受けた瞬間にハッとしたとしても、行動が変わらなければ組織も変わらず、Yさんの望む『アイデアが次々と出てくる会社』にはならなかったでしょう。そうなると、いい質問ではありません。以前は相手がハッとしたら喜んでいましたが(笑)、いまは質問によってその人がどう行動を変え、周囲の人がどのように変化したのかを意識するようになりました」

「絶対的にすぐれた質問」というものは存在しない

粟津さんはどのようにして『良い質問』をしているのですか?

「誰に対しても効果のある、絶対的にすぐれた質問というものはありません。ある瞬間、ある人に対してはとてもいい質問でも、数秒遅くなったり別の人に対してではまったく機能しないのです。『ここ!』というベストなタイミングで適切な質問ができるようになるには、やはりトレーニングが必要です。でも、そう難しいことではありませんよ。私が意識しているのは『相手が質問しないことを聞く』こと。コーチングのセッションを始めるときにはよく、『いつも自分にどんな質問をしていますか』と尋ねます。みなさん最初は驚かれますが、実は人間は頻繁に自問自答しているもの。『明日はどんな服を着よう』『部下にどう声をかけよう』『プレゼンでどう口火を切ろう』など、一日いくつもの質問を自分に対して聞き、答えています。逆にいえば、そういった質問には慣れているので、新しい気づきは起こりにくい。  もうひとつは、『他人にどんな質問をしているか』。会議を前にチームで確認したことやランチで同僚と交わした会話などを知ると、その人が大切にしている価値観や目標が見えてくることがよくあります。気づきを促し、変化を起こすには重要なポイントです。

 このふたつを知って考えるのが、クライアントが『自分ではしていない質問』、かつ、『達成したいことにつながる質問』ですね。それをいかに適切なタイミングで投げかけるか。新聞を読んでいてもタクシーに乗っていても、頭の中にはつねにクライアントの顔が浮かんでいて、今度のセッションではどんな質問をしようかと四六時中考えてはスマホにメモしています(笑)」

(聞き手: Hello, Coaching!編集部)

(聞き手: Hello, Coaching!編集部)

「良い質問」をする技術

著者:粟津 恭一郎
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2016/9/30


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